結婚式場の利益率はなぜ低いと言われるのか?原価構造から見る黒字化のポイント
目次
結婚式場の経営や広告戦略に携わる中で、
「自社の利益率が業界と比べて高いのか低いのか判断できない」
「原価率をどこまで下げれば黒字化できるのか分からない」
「『結婚式場はぼろ儲け』と言われる根拠が分からず反論できない」
このようなお悩みを持っていませんか?
本記事では、上場ブライダル企業6社の決算データや東京商工リサーチ・厚生労働省などの一次データをもとに、結婚式場の利益率の実態と、利益率が低くなりやすい原価構造を解説します。
あわせて、収益力を左右する要因や、黒字化のために式場が取り組める具体策も紹介するので、自社の立ち位置を客観的な数字で把握し、経営判断や広告戦略に役立てられる状態を目指せます。
この記事でわかること
- 結婚式場の利益率の実態と、上場企業6社の決算データによる比較
- 利益率が低くなりやすい原価構造の背景
- 収益力を左右する要因と、差がつく式場の特徴
- 二極化するブライダル業界の最新動向
- 結婚式場が利益率を高めるためにできる具体策
- 「結婚式はぼろ儲けなのか」などよくある疑問への回答
結婚式場の利益率はどれくらいか|実態データで見る収益性

冒頭の悩みにあったとおり、「結婚式場はぼろ儲け」と言われる一方で、実際の利益率がどの程度なのかを数字で説明できる担当者は多くありません。
まずは、結婚式場の利益率の目安と、上場ブライダル企業の決算データから見える実態を整理します。
この章で確認できることは次の3点です。
- 結婚式場の平均的な利益率の目安
- 上場ブライダル企業6社の決算比較で見る利益率の差
- 「ぼろ儲け」と言われる背景と実態のギャップ
自社の利益率が業界の中でどの位置にあるのかを判断する材料として、まず数字から押さえていきましょう。
結婚式場の平均的な利益率の目安
結婚式場の営業利益率は、一般的な飲食業やサービス業と比べても、高いとは言い切れない水準で語られることが多い業種です。
挙式・披露宴は「決まった曜日・時間帯にしか会場を稼働できない」ビジネスモデルのため、稼働日以外にも人件費や設備の維持費がかかり続け、収益を積み上げにくい構造になっているためです。
業界内では、営業利益率10%を一つの達成目安として語られることがあり、逆に言えばそれだけ到達が容易ではない水準だと捉えられています。
「結婚式は儲かる」というイメージだけで自社の利益率を評価するのではなく、稼働構造そのものが利益率の天井を作っていることを踏まえて判断する必要があります。
上場ブライダル企業6社の決算比較で見る利益率の差
結婚式場の利益率を把握する手がかりとして、上場ブライダル企業6社の決算データを比較します。
決算短信をもとにまとめました。
| 企業 | 売上高 | 決算期 | 自己資本比率 |
|---|---|---|---|
| ツカダ・グローバルHD | 731億円 | 12月期 | 26.6% |
| テイクアンドギヴ・ニーズ | 477億円 | 3月期 | 34.1% |
| エスクリ | 262億円 | 3月期 | 29.4% |
| アイ・ケイ・ケイHD | 225億円 | 10月期 | 58.4% |
| ブラス | 135億円 | 7月期 | 36.4% |
| 一蔵 | 194億円 | 3月期 | 15.4% |
売上最大手のツカダ・グローバルHDは自己資本比率26.6%にとどまる一方、アイ・ケイ・ケイHDは58.4%と高く、規模と安定度は一致しません。
売上高だけで判断せず、自己資本比率も確認しましょう。
「ぼろ儲け」と言われる背景と実態のギャップ
結婚式場が「ぼろ儲け」と言われるのは、披露宴一組あたりの金額の大きさが目立つためです。
挙式・披露宴一件あたりの総額は数百万円規模になることが多く、原価や人件費を差し引いた「利益」の絶対額も大きく見えやすいためです。
しかし、本記事の後半で紹介する調査データを見ても、すべての結婚式場が高い利益率を確保できているわけではありません。
売上の大きさと利益率の高さは、必ずしもイコールではありません。
「金額が大きい=利益率が高い」という印象と、実際の収益構造にはギャップがあることを踏まえて、自社の数字を評価する必要があります。
なぜブライダルビジネスの利益率は低くなりやすいのか|原価構造から読み解く

利益率の実態を確認したところで、次に気になるのが「なぜ結婚式場の利益率は低くなりやすいのか」という原因です。
ここでは、原価率・稼働構造・初期投資という3つの角度から、利益率が伸び悩みやすい背景を整理します。
確認できるのは次の3点です。
- 結婚式の原価率の実態
- 週2日稼働という営業構造が収益性を下げる理由
- 初期投資・広告宣伝費の回収負担
原因を分解して理解しておくことで、後半で紹介する黒字化の打ち手も実行しやすくなります。
結婚式の原価率の実態
結婚式場の利益率が伸び悩みやすい要因の一つが、原価率の高さです。
衣装・装花・料理・引出物といったアイテムには、式場が仕入れや提携先への発注で負担するコストが積み重なっており、見積り全体に占める原価の比率が他業種より高くなりやすいためです。
たとえば、衣装や生花、料理といったアイテムごとに原価率を確認すると水準にばらつきがあり、原価率の高いアイテムほど値引きや特典で安易に削ると利益を圧迫しやすい構造になっています。
見積り全体の原価率を一括りで捉えるのではなく、アイテムごとの原価構造を把握したうえで、どこを見直せば利益に直結するかを判断する必要があります。
週2日稼働という営業構造が収益性を下げる理由
結婚式場の利益率が低くなりやすいもう一つの理由が、稼働できる曜日・時間帯の少なさです。
挙式・披露宴は土日祝日や大安に集中しやすく、平日は稼働率が上がりにくいため、同じ固定費を少ない稼働日数で回収する必要があるためです。
一般的な飲食業やサービス業であれば週の営業日数を長く取れる一方、結婚式場は稼働できる日が限られる分、1日あたりに必要な利益額が大きくなりやすい構造にあります。
稼働日数が限られているという前提を踏まえたうえで、平日や閑散期にどう収益を積み上げるかが、利益率改善の重要な論点になります。
初期投資・広告宣伝費の回収負担
結婚式場の原価率が下がりにくいもう一つの背景に、初期投資と広告宣伝費の回収負担があります。
挙式・披露宴に対応できる施設・設備を整えるための初期投資額が大きく、さらに新規顧客を獲得するための広告宣伝費も継続的にかかり続けるため、これらを見積り単価に転嫁せざるを得ない構造になっているためです。
たとえば、開業から数年以内の式場ほど、施設投資や広告費の回収負担が重くのしかかりやすく、原価率を下げる余地が限られる傾向があります。
原価率だけを単独で見直すのではなく、初期投資の回収状況や広告宣伝費の配分まで含めて、収益構造全体を見直す視点が欠かせません。
結婚式場の収益力を左右する要因|差がつく式場は何が違うのか

ここまで、原価構造から利益率が低くなりやすい理由を見てきましたが、同じ業界の中でも収益力には明確な差があります。
ここでは、業態や運営モデル、顧客満足度といった観点から、収益力を左右する要因を整理します。
確認できるのは次の3点です。
- 業態(専門式場/ホテル/ゲストハウス)によるPLの違い
- 箱貸し・業務委託モデルによる収益構造の違い
- 顧客満足度と収益性は必ずしも一致しない
自社がどの要因で差をつけられるのかを考えるヒントにしてください。
業態(専門式場/ホテル/ゲストハウス)によるPLの違い
結婚式場と一口に言っても、専門式場・ホテル・ゲストハウスでは収益構造そのものが異なります。
施設の保有・維持コストや、婚礼以外の収益源(宿泊・レストラン・宴会など)の有無が業態ごとに違うため、同じ売上高でも利益の残り方が変わってくるためです。
たとえば、ホテルは婚礼以外の収益源を持つ分、婚礼単体の採算が多少低くても全体の経営は成り立ちやすい一方、婚礼専門式場は婚礼の稼働率がそのまま経営の生命線になります。
自社の業態が持つ収益構造の特徴を理解したうえで、婚礼事業単体の採算ラインをどこに置くべきかを判断する必要があります。
箱貸し・業務委託モデルによる収益構造の違い
近年、施設の保有・運営と、企画・接客の機能を切り分ける「箱貸し」型の運営形態も広がりつつあります。
プランナーやアイテム提供を業務委託・提携先に任せることで、固定費を変動費化し、稼働が少ない時期の収益悪化を抑えやすくなるためです。
このモデルでは、従来のように婚礼一組ごとの粗利をすべて自社で抱え込む形ではなく、提携先との受注配分によって粗利構造そのものが変わってくる点が特徴です。
自社が従来型の運営モデルなのか、箱貸し型に近い運営を取り入れているのかによって、利益率改善のアプローチも変わってくることを押さえておきましょう。
顧客満足度と収益性は必ずしも一致しない
「顧客満足度が高い会社ほど利益率も高い」というイメージを持たれがちですが、実際のデータはそう単純ではありません。
顧客満足度は接客やサービス品質の評価であり、原価率や稼働率といった収益性を決める要因とは別の軸で決まるためです。
オリコン顧客満足度調査「ハウスウエディング」のランキングを見ると、売上規模最大手の企業が上位に入らない一方、売上規模では下位の企業が総合1位を獲得するなど、売上ランキングと顔ぶれが一致していません。
満足度の高さは重要な指標である一方、それ単体では利益率を保証しないことを理解し、原価・稼働率とあわせて経営を評価する視点を持つ必要があります。
▼出典:オリコン株式会社「ハウスウエディング 顧客満足度ランキング」
二極化するブライダル業界|最新データで見る動向

ここまで、上場企業の決算データから利益率の実態を見てきましたが、業界全体で見ると、すべての結婚式場が同じように収益を確保できているわけではありません。
ここでは、公的な調査データをもとに、結婚式場業界で進む二極化の実態を整理します。
確認できるのは次の3点です。
- 減収企業が増えている背景
- 婚姻件数は増加に転じている
- 経営統合が進む業界構造
自社の経営環境を客観的に把握するうえで、業界全体の動きも押さえておきましょう。
減収企業が増えている背景
結婚式場業界では、収益力の差が企業間で広がっています。
挙式単価の値上げが進む一方で、挙式離れや客数の減少を補いきれず、収益が悪化する企業が一定数存在するためです。
東京商工リサーチの調査によると、結婚式場業界では減収となった企業数が前の期の1.7倍に増加しており、業績が持ち直している企業とそうでない企業の明暗が分かれています。
別の調査では、黒字企業は約7割にとどまるとされ、挙式離れによる値上げにも限界が近づいていると指摘されています。
「結婚式場業界は儲かる」という一括りの見方ではなく、稼働率と単価のバランスを取れている会社とそうでない会社に分かれつつあると捉える必要があります。
▼出典:東京商工リサーチ「結婚式場の業績は二極化 減収企業は1.7倍、明暗分かれる」
婚姻件数は増加に転じている
「結婚式場の利益率が低いのは、婚姻数の減少が続いているからだ」という説明もよく見かけますが、この前提は直近のデータと一致しません。
少子化の影響で婚姻件数が減り続けているというイメージが先行していますが、公的統計を確認すると、直近では増加に転じているためです。
厚生労働省の人口動態統計月報年計(概数)によると、直近の婚姻件数は48万9,119組で、前の期から4,027組増加し、2年連続の増加となりました。
婚姻件数の減少だけを利益率低下の理由にするのではなく、稼働率や原価構造といった自社側でコントロールできる要因に目を向けたほうが、対策につながります。
経営統合が進む業界構造
業界内では、大手同士の経営統合という構造的な変化も進んでいます。
単独での収益改善が難しい局面では、統合によって規模を確保し、原価やブランド力を強化する動きが選ばれやすくなるためです。
エスクリとノバレーゼが経営統合し、新社名「株式会社オンザページ」として再出発したことは、その代表例です。
統合後の連結売上高は470億円規模になる見込みとされています。
個社の決算だけでなく、こうした業界再編の動きも踏まえて自社のポジションを見直すことが、中長期の経営判断には欠かせません。
▼出典:株式会社オンザページ「ブライダル大手のエスクリとノバレーゼ 経営統合 新社名を『オンザページ』に」
結婚式場が利益率を高めるためにできること

ここまで、結婚式場の利益率が低くなりやすい原価構造や、業界全体で進む二極化の動向を見てきました。
ここからは、こうした構造を踏まえたうえで、結婚式場が実際に利益率を高めるために取り組める具体策を整理します。
原価・稼働率・集客チャネルという3つの切り口から、自社で着手できるポイントを順番に見ていきましょう。
取り上げるのは次の3点です。
- 原価率の見直しと持ち込み料の設計
- 稼働率を上げる曜日・時間帯戦略
- 集客チャネルの見直しとSNS活用
どれも大きな投資をせずに着手できる打ち手なので、自社の状況に当てはめながら、優先順位の高いものから読み進めてください。
原価率の見直しと持ち込み料の設計
利益率を高める最初の着手点は、原価率の見直しです。
衣装・装花・料理といったアイテムごとの原価率にはばらつきがあり、原価率の高い項目を漫然と据え置いていると、利益を圧迫し続けることになるためです。
たとえば、持ち込み料の設計を見直し、提携先以外の衣装やアイテムを利用する際の条件を整理するだけでも、原価構造を変えずに収益を確保できるケースがあります。
どのアイテムの原価率が高いのかをまず可視化し、値引きや特典で安易に利益を削らない仕組みを整えることが、黒字化の土台になります。
稼働率を上げる曜日・時間帯戦略
次の着手点は、会場の稼働率そのものを引き上げることです。
結婚式場は週2日程度・限られた時間帯にしか稼働できない構造のため、平日や大安以外の日をどう埋めるかが利益率を大きく左右するためです。
平日限定プランや、写真撮影・顔合わせ会場としての貸し出しなど、挙式・披露宴以外の用途で稼働日を埋める動きも広がっています。
「土日祝日の挙式だけ」という前提を一度外し、稼働できる時間をどう収益に変えるかという視点で会場運用を見直すことが有効です。
集客チャネルの見直しとSNS活用
稼働率を上げるには、集客チャネルそのものの見直しも欠かせません。
結婚式場紹介所や紙媒体経由の集客が縮小する一方、SNS経由で会場を知る動線が広がっており、従来のチャネル配分のままでは機会損失につながりやすくなっているためです。
当社では、SNSを活用した会場の魅力訴求や、来館予約への導線設計を通じて、集客コストを抑えながら来館数を増やす支援を行っています。
集客チャネルごとの費用対効果を定期的に見直し、稼働率の底上げにつながる経路へ予算を配分し直すことが、利益率改善の近道になります。
結婚式場の利益に関するよくある疑問

ここまで、結婚式場の利益率の実態や原価構造、収益力を左右する要因、業界動向、黒字化の打ち手までを順に解説してきました。
最後に、こうした内容を踏まえたうえで、結婚式場の利益率についてよく聞かれる質問に、あらためてまとめて回答します。
本文中で触れた内容と重なる部分もありますが、社内での説明や取引先への説明の際にそのまま使える形に整理しました。
取り上げるのは次の2点です。
- 結婚式は本当にぼろ儲けなのか
- 結婚式場の利益率は何%が目安か
疑問が解消されないまま読み終えてしまわないよう、最後に改めて整理しておきます。
結婚式は本当にぼろ儲けなのか
「ぼろ儲け」と断定できるほどの根拠はありません。
挙式・披露宴は稼働できる曜日が限られ、原価率の高さもあいまって、利益率が高いとは言い切れない構造になっているためです。
実際、本記事前半で紹介した東京商工リサーチの調査でも、黒字企業は一部にとどまるとされており、すべての式場が高い利益率を確保できているわけではありません。
金額の大きさだけを見て「儲かっている」と判断するのは早計です。
「利益率が高そうに見える業種」というイメージと、実際の収益構造にはギャップがあることを理解しておく必要があります。
結婚式場の利益率は何%が目安か
結婚式場の営業利益率は、業界内で10%程度が一つの目安として語られることがあります。
ただし、これは会場の稼働率や業態、集客チャネルによって大きく変動するため、一律の基準として当てはめられる数字ではありません。
本記事で紹介した上場企業6社の自己資本比率にも大きな差があり、必ずしも同じ利益率で経営できているわけではないことがわかります。
自社の利益率を評価する際は、業界平均という一つの数字だけでなく、自社と近い業態・規模の会社と比較することが欠かせません。
まとめ

結婚式場の利益率は、「儲かる業種」というイメージだけで語れるほど単純ではありません。
稼働できる曜日・時間帯が限られるビジネスモデルの特性上、原価構造や稼働率の作り方次第で、収益力には企業ごとに大きな差が生まれているためです。
上場企業6社の決算データを見ても自己資本比率には差があり、本文で見た通り黒字企業ばかりとは限らないことからも、業界全体が一律に高収益というわけではないことがわかります。
自社の利益率を業界のイメージだけで判断せず、原価率・稼働率・集客チャネルといった自社でコントロールできる要因から見直していくことが、黒字化への近道になります。


