【正しい読み方】ブライダル業界の年収ランキングでわかる大手5社の実態と採用戦略
目次
ブライダル業界で採用や待遇の設計を任されていると、
「自社の給与水準が業界の中でどの位置にあるのか判断できない」
「他社に人材が流れてしまい、採用の手応えがつかめない」
「求人票にどんな待遇を打ち出せば応募が増えるのか分からない」
このようなお悩みを持っていませんか?
ネット上に出回るブライダル業界の年収ランキングは、実は持株会社と事業会社のデータを混同したまま作られているものが多く、そのまま自社の判断材料にすると読み違えてしまいます。
本記事では、有価証券報告書で確認できる大手5社の実態年収と、職種別の相場、そして年収データを採用力の向上につなげる方法までを解説します。
この記事でわかること
- ブライダル業界の年収ランキングによくある2つの誤り
- 有価証券報告書でわかる大手5社の実態年収
- 職種別(ウエディングプランナーなど)の年収相場
- 年収が伸び悩む業界構造の3つの要因
- 婚姻件数・市場規模から見る将来性
- 年収データを採用力の向上に活かす方法
ブライダル業界の年収ランキングでよくある2つの誤り

ここまで読んで「結局、どの年収ランキングを信じればいいのか」と感じた方も多いはずです。
実はネット上のランキング記事の多くは、次の2つの誤りを抱えたまま数字を並べています。
- 持株会社と事業会社のデータを混同している
- 非上場の大手企業は年収・売上が公表されていない
まず、この2つの誤りがなぜ起きるのかを確認したうえで、次の章から実際に信頼できる大手5社の数字を見ていきましょう。
この視点を持つだけで、他社が公開しているランキングの見方が大きく変わります。
持株会社と事業会社のデータを混同している
「ブライダル業界の年収ランキング」でよく見かける数字には、実態と異なるものが混ざっています。
なぜなら、有価証券報告書に記載される平均年収は、報告書を提出する会社単体の数値であり、グループ全体の実態を表すとは限らないためです。
実際に、ツカダ・グローバルホールディングスの平均年収564.1万円は持株会社(従業員121人)の数字であり、結婚式場を運営する事業会社1,447人分の年収ではありません。
同様に、アイ・ケイ・ケイホールディングスの497.3万円も本社管理部門のみ75人分の数字です。
数字を横並びにする前に、「持株会社単体」か「事業会社そのもの」かを確認する視点を持ちましょう。
非上場の大手企業は年収・売上が公表されていない
ランキングの網羅性を求めるほど、抜け落ちる企業が出てきます。
なぜなら、有価証券報告書の提出義務があるのは上場企業に限られ、非上場の大手企業には年収や売上高を開示する法的な義務がないためです。
実際に、ベストブライダルやPlan・Do・See、アニヴェルセル、ディアーズ・ブレインといった業界大手は非上場のため、有価証券報告書による年収の一次資料が存在しません。
エスクリについても、経営統合前の直近データは取得できませんでした。
ランキングに載っていないことを「規模が小さい」と読み違えず、単に開示義務がないだけだと理解しておきましょう。
有価証券報告書でわかる大手5社の平均年収

ここまでの誤りを踏まえ、実際に確認できる数字を見ていきましょう。
有価証券報告書から、事業会社単体の平均年収を確認できる大手5社を比較し、次の3点を解説します。
- 年収の差はどこから生まれているのか
- 平均勤続年数の長さが示す定着率
- エスクリなど数値が取得できない企業もある
| 企業名 | 平均年収 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 従業員数(単体) |
|---|---|---|---|---|
| ツカダGHD | 564.1万円 | 43.5歳 | 7.9年 | 121人 |
| アイ・ケイ・ケイHD | 497.3万円 | 34.3歳 | 9.3年 | 75人 |
| T\&G | 464.5万円 | 32.3歳 | 6.9年 | 1,447人 |
| BRASS | 437.7万円 | 28.4歳 | 5.7年 | 533人 |
| 一蔵 | 424.7万円 | 37.0歳 | 7.0年 | 589人 |
出典:各社有価証券報告書
年収の差はどこから生まれているのか
表を見ると、ツカダGHDとアイ・ケイ・ケイHDの年収が高く見えますが、これは事業構造の違いによるものです。
なぜなら、この2社は持株会社単体の数字であり、管理部門など少人数・高年齢層の給与水準が反映されやすいためです。
実際に、事業会社そのものの数字であるT\&Gの464.5万円やBRASSの437.7万円と比べると、従業員数の規模(1,447人・533人)がまったく異なり、単純な金額比較では実態を見誤ります。
年収額だけでなく「誰の給与を集計した数字か」まで確認して初めて、公正な比較になります。
平均勤続年数の長さが示す定着率
年収と並んで注目したいのが、平均勤続年数です。
なぜなら、勤続年数の長さは、待遇や働きやすさに対する従業員の納得感を映す指標のひとつだからです。
実際に、アイ・ケイ・ケイHDの9.3年は5社の中で最も長く、ツカダGHDの7.9年、一蔵の7.0年と続きます。
一方でBRASSは5.7年と短めで、平均年齢28.4歳という若い組織構成とも関係していると考えられます。
年収額の高さだけでなく、勤続年数もあわせて見ることで、その企業の「働き続けやすさ」まで推し量ることができます。
エスクリなど数値が取得できない企業もある
ここまで5社を紹介しましたが、業界大手のすべてを網羅できているわけではありません。
なぜなら、エスクリはノバレーゼと経営統合して「株式会社オンザページ」となったため、統合前の単体データを直近の有価証券報告書から確認できなかったためです。
実際に、統合後の連結売上高は470億円規模になる見込みが会社発表・PR TIMESで公表されていますが、年収データはまだ個社別に開示されていません。
業界再編が進む中では、ランキングの対象企業自体が変化し続けることも踏まえておく必要があります。
職種別に見るブライダル業界の年収相場

ここまで大手5社の企業単位の年収を比較してきましたが、実際に採用市場で比較されるのは、求職者が目にする職種ごとの相場です。
ここでは、ウエディングプランナーを中心に、関連する専門職の年収傾向とインセンティブの仕組みまで整理します。
- ウエディングプランナーの年収相場
- ドレスコーディネーター・ヘアメイクなど関連職の年収
- インセンティブ・歩合制が年収を左右する仕組み
求人票の待遇欄を数字で具体化する際の目安として、そのまま活用できる内容です。
ウエディングプランナーの年収相場
ウエディングプランナーの年収は、経験年数によって大きく変わります。
なぜなら、基本給に加えて成約件数に応じたインセンティブが加算される給与体系を採る企業が多いためです。
実際に、東京都のウエディングプランナーの平均年収は432万円、平均時給は1,343円と示されています(出典:求人ボックス「給料ナビ」)。
企業タイプ別に見ても、大手ブライダル企業や専門式場では実力次第で年収を伸ばしやすい
一方、ホテル併設型は基本給と福利厚生の安定感が強みになります。
求人票を作る際は、基本給だけでなくインセンティブの発生条件まで明記すると、応募者の判断材料になります。
ドレスコーディネーター・ヘアメイクなど関連職の年収
ウエディングプランナー以外の職種は、年収の目安がさらに把握しにくい領域です。
なぜなら、ドレスコーディネーターやヘアメイクアーティスト、フラワーコーディネーターといった職種は、企業や配属される会場の規模によって基本給の設定に幅があると考えられるためです。
技術手当やイベント出動手当が上乗せされる給与体系を採る企業が多く、繁忙期の稼働量が年収を左右する傾向があります。
職種ごとの相場を一律に語るより、「どの手当が、どんな条件でつくのか」を求人票で明示する方が、応募者にとって判断しやすくなります。
インセンティブ・歩合制が年収を左右する仕組み
ブライダル業界の年収は、基本給だけを見ても実態はつかめません。
なぜなら、成約件数やオプション成約率に応じたインセンティブが、月々の手取りに大きく影響する給与体系が広く採用されているためです。
実際に、首都圏のブライダル関連求人を見ても、「未経験OK」「成果給で高収入も可」といった訴求が並び、基本給を抑えてインセンティブ比率を高めることで、優秀な人材の年収を引き上げる設計にしている企業が目立ちます(出典:マイナビ転職 首都圏のブライダルコーディネーター求人一覧)。
求人票でインセンティブ制度を打ち出す場合は、平均的な支給実績まで示すと、応募者の不安を減らせます。
ブライダル業界の年収が伸び悩む3つの構造要因

ここまで職種による年収の違いを見てきましたが、企業や職種を超えて業界全体を見ると、なぜ年収そのものが他業界より伸び悩みやすいのでしょうか。
背景には、利益率・繁閑差・非上場企業の多さという3つの構造的な要因があります。
- 利益率の低さが人件費の原資を圧迫する
- 繁閑差の大きさが固定費として重くのしかかる
- 非上場企業が多く年収データが開示されにくい
一つずつの構造を理解しておくと、自社で待遇改善に踏み出す際の打ち手も考えやすくなります。
利益率の低さが人件費の原資を圧迫する
ブライダル業界で年収が上がりにくい背景には、業界特有の低い利益率があります。
なぜなら、会場設営や人件費、装花・衣装といったコストが売上に対して重く、営業利益率が他のサービス業と比べて低い水準にとどまりやすいためです。
実際に、就活情報サイトの分析でも「利益率が低いこと」がブライダル業界がブラックになりやすいと言われる理由の一つに挙げられており、年収の伸びしろが限られる構造だと指摘されています。
利益率の低さは一朝一夕には変えられませんが、待遇面での差別化を図るなら、まず自社の利益構造のどこにボトルネックがあるかを把握することが出発点になります。
繁閑差の大きさが固定費として重くのしかかる
ブライダル業界は、土日祝日や大安に予約が集中する一方、平日は稼働率が下がりやすい業態です。
なぜなら、会場や人員は繁忙期に合わせて確保しておく必要があり、閑散期にも同じ固定費がかかり続けるためです。
実際に、婚礼件数は季節や曜日で偏りが大きく、繁忙期に合わせた人員体制を維持すること自体が、通年での人件費の伸びを抑える要因になっていると考えられます。
稼働の波を平準化できるかどうかが、年収水準を引き上げられるかどうかの分かれ目になります。
非上場企業が多く年収データが開示されにくい
ブライダル業界では、大手と呼ばれる企業の中にも非上場企業が数多く存在します。
なぜなら、上場に伴う開示コストやガバナンス対応の負担を避け、非上場のまま事業を続ける経営判断をしている企業が少なくないためです。
実際に、ベストブライダルやPlan・Do・Seeといった知名度の高い企業も非上場であり、有価証券報告書による年収の開示義務を負っていません。
データが少ないからこそ、開示されている数字だけが実態以上に「業界の相場」として広まりやすいと考えられます。
婚姻件数・市場規模から見るブライダル業界の将来性

ここまで年収が伸び悩む3つの構造要因を見てきましたが、では業界そのものの将来性はどう見ればよいのでしょうか。
ここでは、婚姻件数と市場規模の最新の推移、そして直近の業界再編の動きという3つの切り口から、今後の見通しを整理します。
- 婚姻件数は2年連続で増加している
- 市場規模はほぼ横ばいで推移している
- エスクリとノバレーゼの経営統合が示す業界再編
数字の裏付けとともに業界の実態を把握しておくと、中長期の採用戦略や待遇改善の計画を考えるうえでの土台になります。
婚姻件数は2年連続で増加している
「婚姻数は減少傾向」という情報は、実はすでに古くなっています。
なぜなら、厚生労働省の人口動態統計によると、婚姻件数は2年連続で増加に転じているためです。
実際に、直近の婚姻件数は48万9,119組で、前年から4,027組増加し、婚姻率も4.0から4.1へと上昇しました(出典:厚生労働省 人口動態統計月報年計(概数)の概況 )。
減少傾向という古い情報のまま採用計画を立てると、需要を見誤るおそれがあります。
市場規模はほぼ横ばいで推移している
婚姻件数は増加に転じた一方、市場規模そのものは大きく伸びているわけではありません。
なぜなら、挙式・披露宴にかける費用の単価や、簡素化する式のスタイルなど、件数以外の要因も市場規模に影響しているためです。
実際に、矢野経済研究所の調査では、直近のブライダル関連市場規模は1兆5,786億円(前年比99.9%)、翌年の予測は1兆5,700億円(同99.5%)とほぼ横ばいの水準で推移しています。
件数の増加がそのまま市場拡大にはつながっていない現状を踏まえ、単価やサービス内容での差別化がこれまで以上に問われています。
エスクリとノバレーゼの経営統合が示す業界再編
大手企業同士の経営統合も、業界の変化を象徴する動きです。
なぜなら、単独での成長が難しくなった企業が、規模の拡大やコスト構造の見直しを目的に統合を選ぶケースが出てきているためです。
実際に、エスクリとノバレーゼは経営統合し、社名を「株式会社オンザページ」に変更しました。
統合後の連結売上高は470億円規模になる見込みだと会社発表・PR TIMESで公表されています。
今後もこうした再編が進めば、年収ランキングに登場する企業の顔ぶれ自体が変わっていく可能性があります。
年収データを採用力の向上にどう活かすか

ここまで見てきた年収・市場データは、知識として押さえるだけでなく、自社の採用活動に落とし込んでこそ意味を持ちます。
待遇の見える化、顧客満足度との関係、SNSでの情報発信という3つの観点から、採用力を高める方法を整理します。
- 待遇の見える化が応募数を左右する
- 顧客満足度ランキングと採用ブランディングの関係
- SNSでの情報発信が採用競争力を高める
どれも大きな投資をかけなくても、明日から着手できる取り組みです。
待遇の見える化が応募数を左右する
求職者は、複数の求人を比較しながら応募先を決めています。
なぜなら、給与レンジやインセンティブの発生条件があいまいな求人は、応募のハードルが上がってしまうためです。
実際に、上位の求人情報を見ても、月収や年間休日、賞与実績を具体的な数字で示している求人ほど目立つ位置に掲載され、比較検討の土俵に乗りやすくなっています。
自社の給与水準を業界の実態データと照らし合わせたうえで、求人票に具体的な数字を明記することが、応募数を左右する第一歩になります。
顧客満足度ランキングと採用ブランディングの関係
採用力は、給与水準だけで決まるわけではありません。
なぜなら、顧客からの評価が高い会場は「働きがいのある職場」として求職者にも伝わりやすく、採用ブランディングに直結するためです。
実際に、オリコン顧客満足度調査「ハウスウエディング」では、売上ランキングとは異なる顔ぶれが上位に並んでおり、必ずしも規模の大きさが顧客満足度に比例していません。
給与水準の開示とあわせて、顧客からの評価や働く人の声を発信することが、採用力を底上げする材料になります。
SNSでの情報発信が採用競争力を高める
待遇や評判を整理できても、求職者に届かなければ意味がありません。
なぜなら、求人サイトへの掲載だけでは、潜在的な転職検討層にまで情報が届きにくいためです。
実際に、当社がSNSマーケティングの支援を行う中でも、日々の業務や職場の雰囲気を発信しているアカウントほど、求人への応募だけでなく問い合わせ段階からの反応が良くなる傾向を確認しています。
年収や待遇のデータを整理したうえで、それをどう届けるかまで設計することが、採用競争力を高める最後のピースになります。
まとめ|年収ランキングを正しく読み、自社の採用戦略に活かす

ブライダル業界の年収ランキングは、持株会社と事業会社のデータ混同や、非上場企業の未開示によって、額面通りには読み解けません。
有価証券報告書で確認できる大手5社の実態年収や、職種別の相場、婚姻件数・市場規模の最新動向を踏まえたうえで、自社の給与水準がどの位置にあるのかを見極めることが、採用戦略の出発点になります。
そのうえで、待遇の見える化や顧客満足度の発信、SNSでの情報発信まで組み合わせることで、年収データはただの比較材料ではなく、自社の採用力を高める武器に変わります。


